【為替市場動向】~最近円高にならない件について
~株安のわりに円高にならない~
ドル円相場は、日米の株式や債券市場(金利)と密接に関係しています。金利でいえば、米国の長期金利が上昇すれば、米国債券を保有するメリットが意識され、米国債を買うためにドルが買われ、円が売られやすくなります。株でいえば、日本円はスイスフランと並んで安全資産とみなされているため、株価急落局面では円高が進みやすい傾向があります。
このような傾向が広く知られているにも関わらず、10月の株価急落局面(特に10月下旬)では、これまで見られた円高ドル安が見られませんでした。これはどういう訳なのでしょうか?
~世界は2種類の通貨を軸に動いてる~
ドル円が底堅く推移した背景の一つは、欧州通貨ユーロが売られていたことです。世界の基軸通貨はドルですが、欧州通貨のユーロもそれなりの流通量があります。そのユーロが売られる際、買われるのは基軸通貨ドルが中心のため、ドル高の圧力が働き、恐らくは一定程度あった円高圧力を相殺したのでしょう。特に最近は、ユーロ圏の経済指標が弱含む一方、減税などを背景に、米国の雇用や製造業などの経済指標が極めて好調に推移していました。お金というものは経済が好調な方向に流れるため、景況感の格差からドルが買われていたのです。
<ドルユーロ(下がユーロ安ドル高>
株安が進んだ10月のドルユーロ相場を確認すると、実際に大きくドル高に傾いていることがわかります。この期間は、ユーロの盟主であるドイツの政治不安やイタリアの財政問題、イギリスのEU離脱を巡る不透明感など、経済情勢以外の問題も重なり、ユーロの売り圧力が強まりました。ユーロ円で確認してみると、ユーロ売りに伴う円高が進んでいるのが分かります。
<ユーロ円(下がユーロ安円高)>
~ドルが強いのはいつまで?~
ドル高は日本株にとって都合がいいため、今の為替環境は日本株の追い風になっています。しかし来年以降、法人減税効果が剥落すれば、いつまでドル高が続くかはわかりません。長期的には米経済の成長を評価した強いドルが続く見込みが大きいですが、短期的には円高の局面が来る可能性は頭に残しておく必要があるでしょう。その時が来た際に、日本株がどのように反応するか注目です。